【読解力は測れる】リーディングスキルテストでわかる子どもの“読み”の実力とは?

はじめに:読解力を正しく測ることの重要性
「うちの子、ちゃんと読めてると思うんだけど…」
保護者の方からよく聞く言葉です。しかし実際に、教科書の内容やテストの設問を読み違えていたり、主語と述語のつながりを理解できていなかったりするケースは多くあります。
そこで登場するのが、新井紀子氏が開発した「リーディングスキルテスト(RST)」です。これは、子どもの読解力を構造的・科学的に評価するためのツールです。
今回は、このRSTとは何か、そしてどのような力を測っているのかをご紹介します。
リーディングスキルテスト(RST)とは?
RSTは、文章を読む力を6つの基本スキルに分解して測定します。これは単なる「国語の成績」ではなく、論理的に文章を読む“認知的スキル”を評価するものです。
RSTで測定する主なスキルは次の通りです:
- 係り受けの理解(文中の言葉のつながり)
- 照応解決(「それ」や「この」が何を指すか)
- 同義文判定(言い換え表現の正確な理解)
- 具体例の抽出(抽象表現と具体例の関係理解)
- 否定の理解(否定の構文や意味の捉え方)
- イメージ同定(イラストや図表との整合性)
なぜRSTが必要なのか?
従来のテストや観察では見えにくかった「どの部分で読み間違えているか」「なぜ文章が理解できないのか」を明らかにするのがRSTの最大の特徴です。
例えば、
- 文をすらすら音読していても、指示語の意味がつかめていない
- 問題の文にある「けれども」や「つまり」などの接続詞の意味を誤解している
- 問題文と選択肢の構文を比較できず、勘で答えてしまう
こうした“読めていない”状況を明確に数値化・可視化することで、必要な指導の方向性が見えてきます。
読解力の“穴”を発見するツールとしての意義
RSTは、「読解力が低い=国語ができない」という先入観を打ち破ります。なぜなら、RSTで低スコアを出した子どもが、必ずしも国語の成績が悪いとは限らないからです。
文章を“感覚的に”ではなく“論理的に”読めているかを測るRSTでは、
- 成績は良いが文構造の理解に弱い
- 読書好きだが指示語が読み取れない といった“見えない読解力の弱点”が浮かび上がります。
これは、学校の通知表や模試ではなかなか気づけない貴重な視点です。
保護者としての活用方法
現在、RSTを使った読解力診断サービスや教材も少しずつ広がっています。もしお子さんの「読解力が不安」と感じたら、RSTのような構造的なアセスメントを取り入れることをおすすめします。
重要なのは、
- 「どこが読めていないのか」を明確にする
- 「どうすれば読めるようになるか」の方針を立てる ことです。
「読む力が弱い」=「努力不足」ではありません。構造的に教え、構造的に伸ばす視点が大切なのです。
まとめ:読解力は“感覚”ではなく“構造”で測る時代へ
新井紀子氏の開発したRSTは、「読解力=あいまいな概念」というこれまでの常識をくつがえしました。
読解力は、感覚的な才能ではなく、分析可能なスキルの集積です。
だからこそ、構造的に測り、構造的に教えることが求められます。
次回は、この「読解力は鍛えられるのか?」というテーマで、読解力の伸ばし方について掘り下げていきます。