【読解力は才能ではない】子どもが“読めるようになる”ための具体的な方法とは?

【読解力は才能ではない】子どもが“読めるようになる”ための具体的な方法とは?

はじめに:読解力は伸ばせる力です

「読解力って、センスじゃないの?」「うちの子には向いてないかも…」

そんな声を、保護者や教育関係者からたびたび耳にします。しかし、それは誤解です。

読解力は、生まれ持った才能ではありません。新井紀子氏が指摘するように、読解力とは「身につけるべき技術」であり、体系的に教えることができる力です。

本記事では、読解力を鍛えるとはどういうことか、具体的な方法はどのようなものかを、5000字近くのボリュームで詳しく解説していきます。


読解力を構成する6つのスキル

新井氏が開発した「リーディングスキルテスト(RST)」では、読解力を以下の6つの要素に分解しています:

  1. 係り受けの理解(文中のどの言葉がどれにかかっているか)
  2. 照応解決(「それ」「この」が何を指しているかをたどる力)
  3. 同義文判定(言い換え表現が同じ意味か判断する)
  4. 具体例の抽出(抽象概念と具体例の対応を理解する)
  5. 否定の理解(否定表現の構造と意味を正確に読み取る)
  6. イメージ同定(文章と図や表の内容を正確に対応づける)

これらのスキルは、いずれもトレーニング可能です。では、どうやって鍛えるのかを、以下に具体的に紹介します。


スキル1:係り受けの理解を鍛える方法

係り受けとは、文中の「誰が」「何をした」などの文の骨格を把握する力です。日本語は語順が柔軟な分、助詞(が、を、に、の、など)に大きく依存しています。

● トレーニング方法:

  • 短い文章を分解し、主語・述語・修飾語を線でつなぐ
  • 「この“の”は何にかかっている?」という問いかけをする
  • 文を図解する(木構造などで視覚的に係り受けを表す)

これは、国語だけでなく、算数の文章題を正確に読むためにも不可欠な力です。


スキル2:照応解決を鍛える方法

文章中の「それ」「この」「あれ」などが何を指すかを読み取る力が照応解決です。これができないと、文と文のつながりが理解できません。

● トレーニング方法:

  • 代名詞の登場ごとに「何を指しているか?」と確認する習慣をつける
  • 指示語だけを塗りつぶした文章を読ませ、復元させる
  • 二つの文を読ませて「この“それ”は何ですか?」と質問する

照応解決力が低い子は、読んだ気になっていても実は理解が追いついていないことが多いです。


スキル3:同義文判定を鍛える方法

言い換え表現やパラフレーズ(別の言い方)を理解できる力です。教科書でも「つまり」「すなわち」「たとえば」などを使った再表現は頻出です。

● トレーニング方法:

  • 「この文と同じ意味の文はどれ?」という選択問題を出す
  • 教科書の文を、自分の言葉で書き換えさせる
  • 文と文の意味の一致/不一致を検討させる

このスキルがあると、文章全体の意図や要点がつかみやすくなります。


スキル4:具体例の抽出を鍛える方法

「たとえば」という言葉の前後で、どの情報が抽象で、どれが具体かを区別する力です。

● トレーニング方法:

  • 抽象的な言い回しのあとに続く具体例をリストアップさせる
  • 抽象と具体の関係を図にする(概念マップ)
  • 「この例は、どの説明の一部ですか?」と問いかける

理科や社会では、このスキルが非常に重要になります。


スキル5:否定の理解を鍛える方法

「〜ない」「〜とは限らない」「〜しか…ない」など、否定構文は文章理解を難しくします。

● トレーニング方法:

  • 否定文と肯定文を比較して意味の違いを確認する
  • 「〜ではない」の対象がどこにかかっているかをチェックする
  • 「二重否定」の構文を読み取る練習をする

このスキルが欠けると、設問の意図や反対の意味を取り違えるリスクが高まります。


スキル6:イメージ同定を鍛える方法

文章と図表・イラスト・写真などの情報を対応づけて理解する力です。特に理科や算数で重視されるスキルです。

● トレーニング方法:

  • 説明文と図表を照らし合わせて、「どの部分が何を表しているか」を確認する
  • 「この図の説明を言葉でしてみて」と促す
  • 表やグラフから読み取れる情報を言語化させる

この力は非言語情報を文章に変換する力にもつながり、作文力にも貢献します。


読解力トレーニングの基本方針:反復とフィードバック

読解力を鍛えるには、以下の3つが不可欠です:

  1. 反復練習:同じスキルを違う文章で何度もトレーニングする
  2. 具体的な問いかけ:「この“それ”は何?」「何と何がつながっているの?」など
  3. すぐにフィードバックする:「ここが違うね」「この文の主語は何だろう?」と即時対応

これは家庭でも十分に実践できます。保護者が問いかけ役になることで、日常会話も読解トレーニングになります。


まとめ:読解力は“教えられる力”、だからこそ希望がある

新井紀子氏が繰り返し伝えているのは、「読解力は生まれつきの力ではなく、訓練可能なスキルである」という希望のメッセージです。

そして、それを鍛える方法も明確に存在します。感覚やセンスに頼るのではなく、論理的に読み取る力を、構造的に教えること。

保護者の方に伝えたいのは、「読めないのは能力の問題ではない」ということ。正しく読めるようになれば、学力は必ず伸びます。

次回は、実際に「読解力が育った子どもがどう変化したか」という事例を交え、教科書が読めるようになるとどう人生が変わるのかをご紹介します。

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