【読解力は“国語の力”ではない】すべての教科で問われている“読む力”の正体

はじめに:読解力=国語のイメージにご注意!
「国語が苦手だから読解力がない」「国語さえ得意なら他の教科も大丈夫」
このような誤解、実はとても根強くあります。しかし、子どもたちが日々向き合っている学校の教科学習は、すべて“読解力”と密接に関わっているのです。
今回は「読解力はすべての教科に必要な力である」という前提のもと、教科別に求められる“読み方のちがい”を具体的に解説します。これを知ることで、「なぜテストになるとできないのか」「なぜ学年が上がると成績が下がるのか」の謎が見えてきます。
国語は“読解力の入り口”ではあるけれど
もちろん、国語での読解力は大切です。物語文では登場人物の心情を読み取る力、説明文では構成を把握する力などが求められます。
しかし、ここで注意したいのは「国語の読解力」と「他教科の読解力」はまったく同じではないということ。
理科や社会では、物語的な“想像力”ではなく、“構造的・論理的な読み”が必要です。そして、算数や数学に至っては「言葉を論理記号に変換する力」まで問われます。
つまり、読解力=国語だけのスキルではないのです。
算数・数学:文章題は“読解力の試験”
算数が得意だった子が、急に4年生あたりからつまずく理由のひとつに、「文章題の読解」があります。
- 問題文に含まれる条件を正確に読み取れていない
- 問われていることがあいまいなまま式を立ててしまう
例:
「1個120円のりんごを3つ買って、200円のぶどうも1つ買いました。合計はいくらでしょう?」
この文章を正確に読み解くには、
- いくつの品物があるのか?
- 単価と数量の関係は?
- 合計の求め方は?
といった“読み方”が必要です。つまり、算数の力以前に「読めているか」が問われているのです。
理科:因果関係を読み取る力
理科では、「なぜ?」「どうして?」という問いに対し、文中の情報から論理的に説明する力が求められます。
例:
「気温が下がると空気中の水蒸気が水滴になる」
この一文から、「どういう条件のときに何が起きるか?」を理解しなければなりません。
また、実験レポートでは「まず〜を行い、次に〜を加える」という手順や、「〜の結果、〜とわかった」という因果構造を正確に読み取る必要があります。
ここでも**“文章の構造を読む”力が重要な鍵**になります。
社会:抽象語と構造の理解
社会科の文章は抽象的な用語や概念が多く、「制度」や「仕組み」の説明が中心です。
例:
「三権分立とは、国家権力を立法・行政・司法の3つに分け、それぞれが互いに監視し合う仕組みである」
このような説明文を正確に読み取るには、
- 抽象語(制度・権力・監視など)を理解する語彙力
- 「〜とは」「〜のために」「〜によって」などの構造を捉える力
が必要です。つまり、社会の学力も読解力によって左右されているのです。
英語:英文法だけでなく“英文構造”も読解力
英語も例外ではありません。むしろ、英語は「言語構造が日本語と異なる」ため、読解の難易度がさらに上がります。
- 主語と述語の位置が遠い
- 時制や助動詞など、読解のヒントが文法構造にある
- 単語の意味だけではなく文全体の構造理解が必要
英文読解には、“構文を読む力”が不可欠。日本語での論理的読解が苦手な子ほど、英語でもつまずきやすいのです。
まとめ:教科ごとの“読み方”を知ろう
「読解力がない」=「国語ができない」ではありません。
- 算数では、条件を読み取って数式に変換する
- 理科では、因果を読み取り、構造をつかむ
- 社会では、抽象語の意味と関係性を理解する
- 英語では、構文と論理の筋道を追う
こうして見てくると、すべての教科に共通して“読む力”が必要だということが分かります。
お子さんの学習につまずきが見られたとき、「どの教科の、どの“読み方”でつまずいているのか?」を見極めて、教科別の読解力をサポートしてあげることが、今後の学力を大きく左右するのです。
教科書を本当に「読める」力、ぜひ一緒に育てていきましょう。