【読書好きでも読解力が低い？】読書習慣と読解力の本当の関係とは

はじめに：読書習慣があっても読解力は高まらない？

「本が好きな子は、きっと読解力も高いだろう」

そう思っている保護者の方は多いのではないでしょうか。実際、読書が好きなお子さんは多くの言葉に触れ、豊かな想像力を育んでいるように見えます。しかし、実は「読書が好き」と「読解力が高い」は必ずしもイコールではありません。

読解力の重要性を指摘し続けてきた新井紀子氏は、まさにこの点に警鐘を鳴らしています。読書習慣があっても、教科書や試験問題が「読めていない」子どもが数多く存在しているのです。

新井紀子氏の読解力調査「リーディングスキルテスト（RST）」では、文章を読む際に必要な6つのスキルを測定しています。なかでも以下のようなスキルが重要です：

実は、こうした「文章の構造を理解する力」は、読書量の多さとは関係がありません。物語を楽しむ力と、文法的・論理的に文章を読み解く力は、まったく別のスキルなのです。

読解力とは、

新井紀子氏は、「読解力とはセンスではなく、身につけるべき技術である」と繰り返し述べています。つまり、読書をたくさんしたからといって自然と身につくわけではなく、明確な指導と練習が必要なのです。

たとえば、本を読んでいても以下のような読み方では読解力は育ちにくいのです：

読解力を高めるには、「文の構造を正確に理解すること」が何よりも重要です。

現代の子どもたちは、娯楽的な読書やマンガ、小説には比較的慣れ親しんでいます。しかし、教科書や説明文、論説文のような「抽象的で論理的な文章」に触れる機会が少ないという課題があります。

また、学校や家庭でも「読書をさせること」が目的化されてしまい、「どのように読んでいるか」まで踏み込まれていないことが多いのです。

これにより、

もちろん、読書は大切です。想像力や語彙力、表現力を育てるうえで欠かせない営みです。しかし、それを「読解力向上」につなげるためには、次のような関わり方が必要です。

つまり、読書の“量”ではなく“質”を高めることが、読解力育成への道筋になります。

読書習慣があることは、教育的には素晴らしいことです。しかし、それが直接的に「読める力＝読解力」につながるわけではないことを、保護者の方にはぜひ知っていただきたいと思います。

新井紀子氏の理論が教えてくれるのは、「読むこと」は単なる行為ではなく、「理解するためのスキル」だということです。

お子さんが「本が好き」であるなら、ぜひその読書の延長に、「文章を正確に読む力」を育てる機会をつくってあげてください。それが、これからの時代を生きる子どもたちにとって、何よりの力になるはずです。