【読めたつもりの落とし穴】子どもが本当に理解しているかを見抜く方法

はじめに:音読ができるのに、なぜ内容が頭に入っていないの?
「うちの子、教科書をスラスラ音読できるんです。でも、何が書いてあったかを聞くと、答えられないことが多くて…」
これは決して珍しいことではありません。実際、学校や家庭で“読めたつもり”になってしまっている子どもはとても多いのです。
一見、読めているように見える。しかし、内容の理解はあいまい。そんな“読解力の落とし穴”について、今回は新井紀子氏の理論をベースに考えてみましょう。
なぜ「読めたつもり」になるのか?
「読めたつもり」は、以下のような状況でよく起こります:
- 音読がスラスラできる=内容も理解できていると思い込む
- 難しい言葉が出てきても、前後の雰囲気でなんとなく理解した気になる
- 質問されるまで、自分が“わかっていない”ことに気づかない
こうした現象の背景には、「生活言語」と「学習言語」のギャップがあります。
家庭や会話では文脈や表情で意味が伝わる「生活言語」が中心ですが、教科書は文脈を補ってくれません。正確に言葉の構造を読み取らなければ意味を理解できないのが、「学習言語」の世界なのです。
「読めたつもり」現象の典型例
例①:
問題:太郎は次郎よりも背が高い。では背が低いのは?
→「太郎!」と答えてしまう。
→ 読んだ情報をきちんと整理せず、なんとなくの印象で答えている典型例です。
例②:
「水は100℃で沸騰する」という記述に対して、「どうして水は沸騰するのか?」と問われると答えられない
→ 単なる暗記ではなく、因果関係の理解が求められていることに気づいていない。
読み直さない、設問を見落とす子の特徴
“読めたつもり”になっている子どもには、以下のような傾向があります:
- 文章を一度読んだだけで「わかった」と思い込み、読み返さない
- 設問の条件や制約を見落としていることに気づかない
- 質問文の意図(何を聞かれているか)を正確に把握できない
これは決して能力が低いということではありません。「読解の習慣」が身についていないことが問題なのです。
「本当に読む力」をつけるにはどうするか?
読解力を育てるためには、以下のような実践が効果的です:
1. 音読後に必ず「どんな内容だった?」と聞く
単に読ませるだけでなく、「誰が何をした?」「どうなった?」「理由は?」など、具体的に内容を言語化させることが大切です。
2. 文章の構造を図解する
登場人物・出来事・原因と結果などを図にして整理すると、文章全体の構造が見えるようになります。
3. 設問の“問い方”に注目する
「〜はなぜか?」「〜とはどういう意味か?」など、設問ごとの意図を読み取るトレーニングを繰り返します。
4. 読み直しを習慣にする
わからなかったとき、または迷ったときには「もう一度読む」という行動を自然に取れるように促します。
おわりに:読解力は“感覚”ではなく“技術”
読解力とは、センスではなく“読んで、確認して、整理する”というプロセスの積み重ねで育つ力です。読めているつもりのままでは、いつか必ず壁にぶつかります。
まずは保護者が「本当に理解できているか?」を問い直す声かけをすること。そして、“なんとなく読む”から“意味をつかみ取る”読み方へと、少しずつシフトしていく支援が必要です。
子どもが本当の意味で「教科書を読める」ようになるために、今日からできることを一つずつ始めていきましょう。