【学力の伸び悩みは“国語力”ではなく“読解力”不足かもしれません】

はじめに:「国語はできているのに、なぜか勉強についていけない…」
「うちの子は読書もよくするし、国語の成績も悪くない」
「それなのに、算数や理科の文章題になると急につまずく」
そう感じたことはありませんか?
実はこの“ギャップ”こそが、読解力と国語力の違いから生まれているものなのです。
新井紀子氏の研究では、「国語が得意でも教科書を正確に読めていない」子どもが数多く見られました。
今回は、国語力と読解力の本質的な違いを明らかにし、すべての教科で求められる“読み解く力”について考えていきます。
読書好きでも「教科書」は読めない?
保護者の方の中には「本をよく読んでるから読解力もあるだろう」と思っている方も多いかもしれません。
しかし、新井紀子氏は次のように指摘しています:
「読書習慣があること」と「教科書を読めること」は別問題です。
実際、読書好きな子が、理科や算数の文章題でつまずくことはよくあります。
その理由は、読書と教科書では“読む力の種類”が異なるからです。
● 読書:物語的文脈や感情移入に助けられる読み
● 教科書:論理構造や定義、因果関係を正確にたどる読み
つまり、「ストーリーを追う力」と「情報を構造的に整理する力」は別物なのです。
国語の成績と“読解力”は一致しない理由
国語のテストでは、漢字や語句の意味、作文、文学的理解が問われることが多く、
必ずしも“論理的読解”だけで点が取れるとは限りません。
一方、読解力とは:
- 文の中の構造(主語・述語・修飾語など)を正確に把握する力
- 指示語(これ・それ・あの)の内容を前文から明確に読み取る力
- 論理関係(原因と結果、条件と結論など)を正しく理解する力
これらの力は、国語の中でも限られた問題でしか問われていないことが多いのです。
つまり、国語のテストで点が取れていても、“教科書を正確に読む力”が身についていない場合がある、というわけです。
教科別に必要な“読解のちがい”とは?
すべての教科で、実は異なる読解力が求められます。
以下は一例です:
- 算数:条件を正確に読み取り、数式に変換する力
- 理科:因果関係や手順を理解し、実験の意味を読み取る力
- 社会:制度や歴史的事象の関連性を構造的に把握する力
- 英語:語順や文法構造をもとに、英文を正しく読み解く力
このように、教科によって“読み方”はまったく異なり、それぞれに対応した読解技術が必要なのです。
保護者が見逃しがちな“読解力不足”のサイン
以下のような様子が見られたら、もしかすると「読解力」に課題があるかもしれません。
- 問題を読み飛ばしてミスする
- 「なんとなく」で答えることが多い
- 授業の内容が頭に入ってこないと感じている
- 理解の根拠を説明させると詰まってしまう
これらはすべて、“教科書を論理的に読めていない”兆候の可能性があります。
おわりに:本当の意味で「読める」子を育てるために
読解力は、国語のスキルではなく、“すべての教科の土台”になる力です。
「本が好き」「国語は得意」──それだけでは、子どもが教科書を“理解して読めている”とは限りません。
まずは保護者の方が、「国語力=読解力ではない」ことに気づくこと。
そして、各教科で求められる“読み解く力”に目を向けることが、
今後の学習の土台づくりにつながります。
子どもの“読む力”を、今こそ見直してみましょう。