【努力しているのに成績が伸びない本当の理由──“教科書が読めていない”可能性、見逃していませんか?】

はじめに:「がんばっているのに成績が伸びない…」
「家でちゃんと勉強しているのにテストの点数が上がらない」
「授業中もまじめに聞いてるのに、内容が頭に入っていないみたい」
こんな悩みを抱える保護者の方は少なくありません。
実はその原因の多くは、“努力不足”や“理解力の欠如”ではなく、
「教科書の文章を正確に読めていない」ことにあるのです。
今回は、教育界の第一人者である新井紀子氏の理論をもとに、
子どもたちが「読めているようで読めていない」状態に陥る原因、
そしてその改善に向けた第一歩を考えていきます。
努力しているのに成果が出ない子どもたち
ノートはきれいに取れている。
宿題もきちんとやっている。
授業態度もまじめ。
でも、テストになると点数が取れない。
あるいは、先生の話を一生懸命聞いていても「わからない」と言う。
その背景には、“読む力”のズレが隠れている可能性があります。
- 問題文の条件を正確に読み取れていない
- 説明文の論理構造が把握できていない
- 専門用語の意味がつかめていない
つまり、「教科書の言っていること」が本当にはわかっていないのです。
新井紀子氏の警鐘:「教科書が読めない子どもたち」
AIと読解力の研究で知られる新井紀子氏は、
全国の中高生を対象とした読解力調査(RST)を通じて、
次のような衝撃的な事実を明らかにしました:
多くの子どもたちは、教科書に書かれている文章を正確に読めていない。
ここでいう「読めていない」とは、
単語の意味がわからないという話ではなく、
「文と文の関係性」「文章全体の構造」「前提と結論」などを
論理的に把握できていないということです。
新井氏は、このような読みの力を「シン読解力(新・読解力)」と呼び、
日本の教育に警鐘を鳴らしています。
読解力の欠如が“すべての教科”に波及する
読解力は国語だけの話ではありません。
むしろ、教科書が存在するすべての科目で必要な“土台”です。
- 算数の文章題が読めなければ、計算力があっても解けない
- 理科の実験手順を読み違えれば、実験は失敗する
- 社会の歴史や制度を説明する文章が読めなければ、記憶に残らない
- 英語の教科書を構造的に読めなければ、単語だけでは理解できない
つまり、読解力は“すべての教科の前提”として機能しているのです。
どれだけ努力しても、「読むこと」がズレていれば、
子どもは“迷子のまま”学習を続けることになります。
家庭でできるチェック方法:「読めているか」を確かめる
「うちの子、本当に教科書を読めてるの?」
そう感じたとき、以下のような方法で簡単にチェックできます:
● 音読のあとに「内容説明」をさせてみる
→ 誰が何をして、どうなった? 理由は? を話せるか?
● 問題文の“条件”を言葉で説明させてみる
→ 「何が与えられていて、何を求められているの?」
● 自分の言葉で「言い換え」できるか
→ 難しい言葉を、自分の表現に置き換えて説明できるか?
このように、「読めているか?」は“読んで終わり”では判断できません。
自分の頭の中で“再構成”できるかどうかがカギなのです。
おわりに:「読む力」こそ、すべての土台
どんなに努力しても、理解していなければ成果にはつながりません。
そして“理解”の入口には、必ず「読むこと」があります。
お子さんの学習のつまずきが、「努力が足りない」のではなく、
「教科書の日本語が読めていないから」だとしたら、
それは大人が見抜いて、支えてあげるべき課題です。
教科書を正しく読めるようになることが、
すべての教科の“本当の学び”につながります。
まずは今日から、読解力を「見える化」してみてください。
きっと、お子さんの伸びる力に出会えるはずです。